(5)散策、海底2万マイル
BY 餡子郎
 空腹だったため、全員あっという間にパンを食べてしまう。ごみを小さくまとめると、ガブリエラが小走りで近くのごみ箱に捨てに行った。
「あっそうです、これをお渡ししておきますね」
 そう言ってガブリエラが皆にひとつずつ配ったのは、“Vacation Packages”と大きく書かれた、ミッキーデザインのパスケースだった。入っているチケットには、フリードリンクチケット、と日付つきで書いてある。
「フリードリンクチケットです。カップに入ったソフトドリンクなら、これを提示すれば日程中ずっと無料です! 先程のコーヒーもこれで頂いてきました」
「へえ」
「ふぅん、なかなかサービスがいいわね」
 感心しつつ、ふたりはフリードリンクのチケットホルダーをポケットに入れたり、バッグに仕舞ったりした。ライアンとガブリエラは、パークチケットのホルダーと一緒にぶら下げている。

「じゃあ行くか」
「あ、最後まで観ていかなくていいんですか? 写真とか……」
 歩き出したライアンに、まだ音楽とともに踊っているミッキーとミニーを指して、バーナビーが言う。そこまでミッキーをリスペクトしているならじっくり観たいのではないのかと思ったのだ。
「まあ観たいけどな。でも一昨日も観たし」
「一昨日……」
 そういえば、彼らは前日と一昨日もここにいるのだった、とバーナビーは思い出した。しかも、イースターイベントが始まった初日に4日間も来たらしい。滅多に来れないからとはいえ、どれだけ熱を上げているんだ、とバーナビーは呆れる。
「写真はアーリーエントリーの15分の間にグリーティングで撮ったし」
「グリーティング?」
「だいたい決まったスポットにキャラクターが出てきてくれて、コミュニケーション取ったり写真撮ったりできんの。人気のアトラクション早めに乗るやつもいるけど、15分だったらやっぱグリーティングだよなあ!」
 とても満足そうな顔で言ったライアンが端末で見せてきたのは、ミッキーとミニーと一緒に満面の笑みで映っている彼らだった。ミッキーとライアンのツーショットや、ミニーとガブリエラのツーショットもある。
 その姿は完全にバカップルであり、そして重度のディズニーバカでもあった。

「今日めちゃくちゃ空いてるから、すげーたっぷりグリーティングできてさあ!」
「はい! たくさんお話できましたね!」
 ごみ箱にごみを捨てて戻ってきたガブリエラも、にこにことした。
「お話? ミッキーって喋るの?」
 アンドレアが、意外そうに言った。
「お喋りしますよ」
「へえ〜。あの声で?」
「声はありません」
「え? 声がない? でも喋るって……」
「ハートが通じ合うのです」
「え?」
「ハートとハートでお話しするのです」
 ガブリエラの目は澄んでいた。ライアンも頷いているだけで否定しない。

「……そうですか。良かったですね」

 バーナビーが、意味不明の喃語を話す幼児に返すような口調で言った。
 来たばかりだというのに、このバカップルなディズニーバカたちに対し本日何度めかのドン引きをしながら、バーナビーとアンドレアは彼らの後ろについてディズニーシーに入場していった。



「んじゃ、くる〜っと食べ歩きしながら行こうぜ。歩くだけでも楽しいし」

 そう言ったライアンの言葉は、嘘ではなかった。
 まずは、メディテレーニアンハーバー。古き良きヨーロッパの町並みを再現した風景は、ジャパンとは思えないほど広々としている。先程密集していたときは人が多いと思ったが、この敷地の広さなら、なるほど空いている方だろう。
「あら、ゴンドラ。素敵じゃない」
 アンドレアが、ゴンドリエがゆったりと漕ぐ黒いゴンドラが向こう岸の石橋の下から出てくるのを見つけた。
「ショーも水上でやるんだぜ。キャラクターが乗った船が向こうから出てくる」
「あちらの山は? 煙が出ていますが」
 このまま歩いて行くとおそらくたどり着くことになりそうな大きな岩山を指して、バーナビーが尋ねる。
「あのへんは、ミステリアスアイランド。あれはプロメテウス火山。時々噴火する」
「へえ、すごいですね。いちいち凝っていて」
「凝ってるとかじゃねえんだよ」
「え?」
「凝ってるとかじゃねえんだよ。噴火するんだよ」
 真顔で言い含めてくるライアンに、バーナビーは生返事をしつつ、今度こそ思った。──面倒くさい、と。

「ミステリアスアイランドは、海底2万マイルのアトラクションがありますよ」
「えっ、海底2万マイル? 古い作品なのに」
 ガブリエラの発言に、バーナビーがそわっとした。バーナビーはSFが好きだが、冒険ものの映画も割と好きである。この作品については、原作の小説まで読んでいた。

「ジュニア君、海底2万マイル好きなの? じゃあ乗ってくか」
「待ち時間なしですよ!」

 現在の待ち時間を確認するアプリを見て、ガブリエラが言う。
 大きな岩壁をくぐるように歩いていくと、内部はいかにもスチームパンクという感じの世界観になっていた。
「ジュニア君、こういうの好きだよな」
 そわそわしていることをライアンに言い当てられたバーナビーは、気恥ずかしそうに少し口を尖らせた。
「……嫌いな男はいないでしょう」
「まあね、俺も好き。ロマンだよな」
「そうです、ロマンですよ」
 アプリで確認した通り、海底2万マイルは待ち時間ゼロですぐ乗れる状態だった。螺旋状に下がっていく通路を行くと、ネモ船長の書斎の再現や、古めかしい雰囲気たっぷりの大きな海図、独特のデザインの、使い込まれた風の道具類などが置いてある。
「並んでいても、これなら飽きないですね」
 冷静にコメントしているが、しかしバーナビーのその明るい緑の目はきらめいている。人がほとんどいないので横目で見ながら通り過ぎる感じだが、もしもっと並んでいれば、彼は飽きることなくその展示を眺めていたことだろうと容易に想像できる様子だった。

「そういえば、ふたりともジャパニーズできたっけ?」

 ジャパニーズのアナウンスが流れてきたことで、今更ながらライアンが尋ねる。
「日常会話くらいでしたら大丈夫ですが、漢字は数字ぐらいしかわからないです。カタカナとひらがななら読めます」
 折紙先輩に付き合っていくつかこちらのアニメも観ましたので、とバーナビーが申告する。
「私も、簡単な日常会話ぐらいなら。読み書きは勉強したことないわね」
「そのぐらいなら大丈夫か」
 いやまあ言葉わかんなくても楽しいと思うけど、とディズニーワールドを上げることも忘れず、ライアンは頷いた。
「ライアンは出来るんですか? ジャパニーズ」
「ゆっくりめに聞いて喋る分には、だいたい大丈夫。でも読み書きはジュニアくんのほうが出来るかもな」
「アンジェラは?」
「ああ、こいつはほら……言葉とかじゃなくフィーリングで生きてるから」
 ライアンの返答に、バーナビーは妙に納得した。
 実際、前をスキップせんばかりに上機嫌で歩いているガブリエラは、案内のために立っているキャストに元気いっぱいに「タノシー!」と話しかけてハイタッチをし、今度は「ウレシー!」と言って満面の笑みを浮かべている。バーナビーやアンドレアにはできない所業だ。しようとも思わないが。

「オイシー!」
「いやそれは違うだろ」
 ライアンが、冷静につっこみを入れた。
「ンン? チガウ? ヘルシー?」
「普通に英語じゃねーか」
「メルシー!」
「フランス語!」
 漫才を始めた目立つ外国人カップルに、ハイタッチに応えたキャストばかりでなく、まばらにいるゲストたちまでもがくすくすと笑っている。そんな雰囲気に、ガブリエラはご機嫌な犬のような笑みを浮かべた。
「皆さんがタノシー! ヨロシー!」
「あっ、犬のくせになんか上手いこと言いやがって」
「ふふん」
 ガブリエラのどや顔でオチがついたところで、とうとう順番が回ってきた。

 にこやかなキャストに案内され、彼ら4人でなくても屈まなければいけないような作りの、潜水艇ネプチューン号と名づけられたライドに乗り込む。本来は二人組の座席で3組乗れるのだが、人が少ないので、4人でひとつのライドに乗り込んだ。
「ジュニア君、そっちがいいよ」
「そうですね」
 なぜかそう言うライアンとガブリエラに促され、ライド内の雰囲気いっぱいの計器類を眺めていたバーナビーは、進行方向の真ん中の席に座った。ガブリエラとアンドレアは右側、ライアンは左側。男ふたりが別れているのは、単に図体の問題である。

 ──こちらコントロールセンター。潜水艇、遠隔操作スタンバイ
 ──サーチライト、作動テスト


 聞きとりやすい、そして雰囲気たっぷりのアナウンスと鐘の音がして、ライドが動き始める。
「かなり暗くなるのねぇ」
「大丈夫ですよ、おばけは出ません!」
「そういう心配をしてるんじゃないけど、……ああ、ええ、そう。オバケは出ないの。良かったわね」
 なぜか自信満々で言うガブリエラに対するアンドレアは、もはや幼児を相手にしているかのようである。
「このレバーでライトが動くので、照らしながら探索するのです。とてもきれいですよ!」
 そうアンドレアに説明しているガブリエラの声を聞きつつ、バーナビーも、目の前にある真鍮色のレバーをがちゃがちゃ動かしてみた。これだけでも心が少年のようにワクワクしてしまう。

 そして、ライドは海底2万マイルの世界に突入した。



 5分程度のアトラクションだったはずなのだが、ライドから降りた後、バーナビーは映画を1本観たような心持ちとともに、はあ、と息をついた。逆のドアから出たガブリエラが、またキャストに「タノシー!」とハイタッチをしている。

「バーナビーさん、いかがでしたか!」
「素晴らしかったですね。遺跡の所とか、とても綺麗でした」
「きらきらでしたね! 私は大きいイカが出てくるところと、あと、あの海底人が好きです」
「ちょっとかわいいですよね」
「かわいいです! あっバーナビーさん、ニモは見つけられましたか?」
 アトラクションが始まって間もなく、オレンジ色のクマノミがぽつんと泳いでいるところがあるのだ。飛行機の中でファインディング・ニモを視聴したとバーナビーから聞いていたガブリエラは、すかさず質問した。バーナビーが笑顔で頷く。
「ええ、ライアンに教えて貰いました」
「新しく出来たニモのアトラクションは、来月から始まるそうです」
「夏に合わせたんでしょうか。今回乗れないのは残念ですね」
「しかし、クラッシュのアトラクションはありますよ!」
「クラッシュ? あの、ウミガメの?」
「はい、彼です。直接お話できる装置があってですね……」
 アトラクションに乗る前はガブリエラのテンションについていけず一歩以上引いていたはずのバーナビーは、今やすっかり彼女がもたらす情報に聞き入っている。

「まー、盛り上がっちゃって。やっぱり男って子供っぽいとこあるわよねぇ。バーナビーも例外じゃなかったのね」
「お前もガブにアリエルいるって言われた時、“どこ!?”つってたじゃねえか」
「よ、良かれと思って言ってくれてるのに反応しないのは悪いじゃないの!」
 しらっとした半笑いで指摘してきたライアンに、アンドレアは眉間にしわを寄せて反論した。ちなみに、隠れアリエルと呼ばれる人魚姫は、始まって間もなくの彫刻と、沈没船に描かれた絵で確認することが出来る。



 とりあえずミステリアスアイランドを楽しんだ4人は、プロメテウス火山の下、アーチ状の鉄骨でできたトンネルに入る。
「ここを抜けて右に行くとロストリバーデルタ。インディ・ジョーンズのアトラクションがあります!」
 方向感覚に優れたガブリエラは、しっかりと説明した。何日か歩いて、もう既にパーク内の地図はすっかり頭に入っているらしい。
「インディ・ジョーンズですか。虎徹さんが好きだと言っていましたね」
「バーナビーさんはあまり?」
「謎解きや冒険のシーンは楽しいのですが、インディは女性関係になるとちょっとあれなので、あまり共感できなくて」
 ピュアかよ、とライアンが小さく呟いた。
「その向こうはアラビアンコーストと、マーメイドラグーンです。アラビアンコーストはアラジン、マーメイドラグーンはリトルマーメイドです! どちらもきらきらして綺麗なエリアです」
「……アラジンと、リトルマーメイド……」
「あ、アンドレア、行きたいですか?」
 アンドレアのごく微かな声を聞き逃さなかったガブリエラが、きらきらした目で振り返る。アンドレアが、ぎくりと肩を跳ねさせた。

「べ、別に。あなた達が行きたいなら付き合うけど?」
「そうですか? うーん、ポップコーンがなくなってしまったので買いたいのです。今度はしょっぱいものが良いです」
 そう言って、ガブリエラは悩ましげに眉を寄せ、首をひねった。
「アラビアンコーストの、カレーポップコーン……」
「そっち行くと色々遠回りになるだろ。ここからレールウェイ乗って、アメリカンウォーターフロントのブラックペッパーは?」
 ライアンが言うには、トンネルを抜けてすぐアメリカンウォーターフロントに直結しているパーク内列車、エレクトリックレールウェイの発着駅があるという。
「あっ、そうします! ではその前に、そこでパイを食べましょう!」
 ライアンの提案に笑顔で頷いたガブリエラは、トンネルを出てすぐのところにあるワゴンに向かっていった。赤毛を揺らしながら元気に歩く彼女の後ろを、ライアンとバーナビーが続く。
 アンドレアは、ロストリバーデルタ──その向こうはアラビアンコーストとマーメイドラグーンだという道をちらりと見遣ってから、黙って彼らに続いた。

「ライアン! グーフィーがいます!」
「マジ!? おおー、しかも衣装違うやつ!」

 パイを買いに行こうとしたその時、階段の下で予期せぬグリーティングを発見したふたりは、あっという間に大興奮のテンションになった。
 ガラス張りの大きなレストランの向こうでは、ライアンと同じくらい背の高いグーフィーがおっとりと歩いてきていている。
「グーフィー! 格好いいです!」
「……グーフィーって、なんかボーッとしたキャラクターよね?」
 はしゃぐガブリエラに、アンドレアが怪訝そうに言う。
「ちげーよ、グーフィーは余裕のある大人の男なんだよ。ん〜、シブいよなグーフィー」
「あなた達のコメントを聞いていると、キャラクターの印象がよくわからなくなってくるんですが……」
 ライアンの真顔のコメントに、バーナビーは困惑気味である。

「俺ら写真撮ってくるけど、お前らはどうする?」
 そわそわしながら、ライアンが言う。
「私はいいわ。パイ食べたいし」
「僕もそうします。えーと、おふたりは2種類とも買えばいいんですよね?」
「ありがとうございます! 飲み物はオレンジでお願いします!」
 ガブリエラがそう言うや否や、ふたりは足早にグーフィーのところに向かっていった。

 やはり人が少ないせいか、バーナビーとアンドレアがパイと飲み物を買って階段を降りてきても、ふたりはまだグーフィーたちと戯れていた。見目のいい外国人とキャラクターの絡みに、周りの人々も笑顔である。
 だがあそこまで雰囲気がいいのは、彼らがキャラクターを独占せず、ライアンが気前よく他のゲストの写真も撮ってやっていたり、待っている人にガブリエラがちゃんと気付いて順番を譲っているというのもあるだろう。

「お、せっかくだからジュニア君たちも一緒に写真撮ろうぜ」
「いえ僕たちは」
「撮りましょう! グーフィー! 私の友達も一緒に写真を撮りたいです! いいですか? ありがとう!」
 ほとんどジェスチャーで、しかし完璧にコミュニケーションを取っているガブリエラによってあれよあれよという間にポジションが決められ、にこにこ顔のキャストが、グーフィーを中心に5人ぎゅうぎゅうになった写真を撮ってくれた。「ばいばーい!」と大きく手を振るガブリエラに、グーフィーは控えめにおっとりと手を振り返してくれる。

「はー、グーフィーは今回まだ会えてなかったからなー。ラッキー」
「良かったですね!」
 非常に上機嫌で、ライアンとガブリエラはパイを食べている。
「アンドレア、こちらもひとくち食べますか? アプリコットメイプルシロップパイ」
「……そうね。ひとくちちょうだい」
 ミートパイを食べていたアンドレアは、ガブリエラが差し出したパイをかじる。テーマパークにありがちな温め直しの感のまったくない、焼きたてのさくさくのパイはどちらもとても美味しかった。

「あ、ニモのアトラクションができるというのはあそこですか?」
 バーナビーが、ポートディスカバリーの端にある大きな囲いを見た。
「前はストームライダーっていうアトラクションだったんだけど、クローズして変わったんだよな」
 あれも好きだったんだけど、とライアンがパイを食べながら言う。
 工事中だがそう思わせない囲いには、『シーライダー』というアトラクションのタイトルがかかっていて、ニモたちの美しいイラストが大きく描かれていた。
 古びた鉄錆など重厚なスチームパンクの雰囲気だったミステリアスアイランドとはまた雰囲気が変わり、ポートディスカバリーは明るく可愛らしい雰囲気だった。どちらもレトロフューチャーというところは同じだが、ポートディスカバリーはどこかおもちゃっぽく、そして清涼な開放感がある。

 そんなポートディスカバリーの雰囲気を軽く楽しむうちにパイも食べきってしまうと、4人は階段を登って戻り、エレクトリックレールウェイのステーションに向かう。
 やはり空いているため、ちょうど停車していたレトロな赤い列車に乗り込むことができた。

「ヒーローランドの、ファイヤーエンブレムの列車のようですね!」

 景色を眺めながら、ガブリエラが言う。
「そういえばそうですね。ファイヤーエンブレムの列車のほうが走る距離は長いと思いますが」
「ここよりヒーローランドのほうがかなり広いし、パーク半周するもんな。トークが面白くてあんまり長く感じねえんだけど」
 短い会話をする間に、列車はあっという間に目的地に着いてしまった。キャストに促され、先ほどとは雰囲気が違うステーションの階段を降り、雰囲気のある道を歩いて行く。
「ここがアメリカンウォーターフロントな。シュテルンっぽい雰囲気だろ」
「かなりレトロですけど、そうですね。ブロンズに近い感じです」
 ライアンの解説に、バーナビーは頷いた。

「よっし! じゃ、タワーオブテラーのファストパス取りに行くぞー」
「いよいよですね! 楽しみです!」
 拳を振り上げたライアンに追従し、ガブリエラが諸手を挙げてぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ。
「タワーオブテラー? 何? アトラクション?」
「落ちる系の絶叫マシン」
 アンドレアの質問に、ライアンは簡潔に答えた。やがて道を抜けると、大きな建物が見えてくる。緑青の吹いた銅葺き屋根とレンガの壁に、窓の白い縁飾り。フレンチ・ロマネスク風の建築であるが、その形は独特だった。
「へえ? 絶叫マシンっぽくないのねぇ?」
「私、まだ乗ったことがないのです! 他のアトラクションも大好きですが、スリルのあるアトラクション、とても楽しみです!」
 そう言うガブリエラは、とてもうきうきしている。
 彼女を先頭に進み、タワーオブテラーの雰囲気に似たファストパス発券機に行き、13:45〜14:45 という時間帯のファストパスを取ることができた。発券したパスを、それぞれまたパスケースや財布に仕舞う。

「ノルマクリア。じゃ、今度はトイストーリー・マニア行くぞー!」
「おー!」

 ガブリエラが、またノリよく拳を振り上げる。
 しかしその発言に、バーナビーは目を丸くしていた。
● INDEX ●
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