組み分け後
やがて皆の腹がいっぱいになり始めた頃、またどういう仕組みなのかさっぱりわからないが、皿の上の肉やポテトが、まるで初めからそうだったという様子で、すっかりデザート類に変わった。
ありとあらゆる味のアイスクリーム、アップルパイに糖蜜パイ、エクレア、ドーナツ各種、いちご、ゼリー、そしてイギリス伝統のライスプディングとトライフルなどなど。
甘味が好きな者には、夢の様な光景だ。
しかし弦一郎は元々そこまで甘いものが得意ではないのでさっぱりしたレモン味のアイスクリームのみに手を付け、紅梅も重めの食事で胃が辛目であったのもあり、いちごとゼリーを少しずつ食べただけだった。
また、二人が前回の来英時のホテルの食事で試し、揃って表情を微妙に歪めたライスプディングを清純が試したが、やはり微妙な顔をしていた。
米が牛乳と砂糖で煮こまれたお菓子は、米を主食とする日本人の口には、どうしても合わないことがほとんどだ。塩味の豆しか知らない欧米人が、日本の小豆餡を食べて微妙な顔をするのと同じだと説明すると、清純は深く頷いていた。
「ねえ、君、あの『蛇女帝』の孫だって、本当?」
空腹を満たして落ち着いたせいか、全体の雰囲気が賑やかというより和やかになりはじめた頃、近くに座っていた上級生が、紅梅に話しかけてきた。
そしてその質問は皆が満を持していたものであったようで、周囲にいる殆どの生徒が、ぴくりと反応し、耳を傾けたり、もしくは普通に寄ってきて、話を聞こうとする者が山ほど現れた。
「へぇ、そうどす」
「本当だった!」
紅梅が肯定し、それを皆が一斉に広げた途端、どよめきが大きくなった。
なお多くの視線が紅梅に集まるが、彼女は変わらず落ち着いていた。伊達に大物相手に座敷に出たり、大きな舞台に立ってはいないな、と、弦一郎は隣でひとり感心する。
「蛇姫だって」
「カードの? 本当?」
「あの子も色んなものに変身するの?」
「新入生らしいけど、本当にあの年齢なのかしら?」
「大蛇になれる?」
「ああ、だから“スリザリンだが”ってこと?」
「雰囲気はスリザリンっぽくないしな」
「そうね。おっとりした感じ」
「すごい黒髪。触ったら手に色が付きそう」
「お淑やかそうでかわいい」
しかし、このように好き勝手な評価や憶測が飛び交っているのがたくさん聞こえたのには、弦一郎も苦笑するしかなかった。
「うちは、化けの皮なん、被っとおへんえ」
独特の歌うような発音で、紅梅がにっこりして言ったので、周りがどっと笑った。
──なぜか、清純だけは、また生暖かい目をしていたが。
そして紅梅はもちろん、弦一郎と清純も、日本人の留学生に興味津々な上級生らに、質問攻めにされた。
清純は元々占いに興味があることもあり、女生徒を中心に、マグル、日本の占いの話をしていた。
また、清純が簡単な手品を披露すると、これが驚くほど注目を集めた。なぜなら魔法界ではそれこそ魔法が当たり前であるため“手品”という文化自体なく、簡単なものでもまるでタネが見抜けず、非常に不思議なものに思えるらしい。
また弦一郎は、家業が剣術道場であるということを話すと、男子生徒たちがおおいに興味を示してきた。男の子は刀や剣が大好き、というのは、日本に限らずどこでも同じであるようだ。
そしてこれはハッフルパフだけでなく、両隣の寮からも、話を聞こうと人だかりの外にくっついてくる者がいる有り様だった。とくに、グリフィンドールの男子生徒の食いつきぶりがすごい。
紅梅も、最初は『蛇女帝の孫』ということばかり興味を持たれていたが、欧州ではなかなかいない、真っ黒真っ直ぐ、つやつやさらさらの髪や、それを飾る縮緬の布地のリボンなどが女生徒たちからおおいに注目を浴び、話題はすっかりそちらのほうへ向かっていっていた。
さらに、舞妓や芸姑という職業の話や、日本の着物や化粧、アクセサリー、美容法の話などは、いくら話しても種が尽きず、そして女生徒らも、いくらでも聞きたがる。
ハーマイオニーの髪を結っている簪が紅梅のものであるということがわかると、ハーマイオニーが注目され、かわいい、きれいな編みこみ、私もカンザシが欲しいわ、などと声が上がり、ハーマイオニーが照れて赤くなっていた。
そして、清純と弦一郎はマグル生まれだが、それぞれ曾祖父、祖母が魔法使いと魔女であったこと、紅梅も紅椿が本当に魔女であることは最近までよく知らなかったことなども話したが、心配していた差別的なものは、一切なかった。
歓迎会、と言うにふさわしい時間が過ぎてゆくと、やがてとうとう、ほとんど食べ尽くされたデザートの残骸がきれいに消えた。
それを合図にするかのようにダンブルドアが立ち上がると、自然と、広間中がシンと静寂に包まれる。
「エヘン──全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言。新学期を迎えるに当たり、いくつかお知らせがある。まず一年生に注意しておくが、構内にある森に入ってはいけません。これは上級生にも、何人かの生徒たちにも特に注意しておきます」
ダンブルドアは、半月型の眼鏡をきらきらっとさせて、グリフィンドールで最も騒がしくしていたと言っても過言ではない、おそらく三年生の、燃えるような赤毛の双子の兄弟をちらっと見た。
それから続いて、管理人のフィルチ氏から、授業の合間に廊下で魔法を使わないようにという注意があったこと、今学期は二周目にクィディッチの予選があるので、寮のチームに参加したい人は、マダム・フーチに連絡するように、といった事務連絡事項が告げられた。
「そして、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい、四階の右側の廊下に入ってはいけません」
その言葉に、笑った者もいた、が、大まかには神妙に聞いていた。
非常に物騒、しかし突拍子もなさすぎて冗談にも聞こえるそれに、弦一郎は眉をひそめる。そしてその時、ダンブルドア校長は、どうも、冗談にも本気にも、笑っていいのか、それとも警戒すればいいのかわからないようなことを言うところがある、と感じた。
その印象とともに、ふと、ダンブルドアの演説に音のない拍手をしていた紅梅のことを思い出し、そっと横の彼女を伺う。すると彼女は、音のない拍手をしていた時と同じ、無表情に近い顔をしていた。
「……すみません。四階の右側の廊下というのは、工事か何かしているのですか?」
紅梅の様子に何らかの気配を感じた弦一郎は、隣に座っている、三年生の先輩にそっと話しかけた。
彼はセドリック・ディゴリーといって、背が高く、茶色っぽいブロンドに灰色の目をしたハンサムだ。どちらかというと寡黙だが、温和で感じのいい先輩である。
しかもクィディッチのチームに所属していて、シーカーというポジションを任されている、スポーツマンでもある。ひと目で尊敬できそうだと感じるような、理想的な先輩であった。
「いや……ホグワーツでは、工事中、なんていうのはまず聞かないよ。それに、どこか立入禁止の場所がある時は、必ず理由を説明してくれるのが普通だ」
「最初に仰っておられた、森に入ってはいけないというのは?」
「危険な動物が沢山いるからだよ。君たち新入生はともかく、これはホグワーツ生ならみんな知っていることさ。つまり、言うまでもない、ってこと」
「なるほど……」
森には絶対に入らないようにしよう、と、弦一郎は誓った。
「ああ、でも、ハグリッドが外の小屋で森番をしてくれているから安心しなよ。彼は動物全般のスペシャリストだと聞くからね。……でも、確かにおかしいな。何かやってるのかな」
セドリックは、太めの眉を顰め、困惑した顔で言った。
「最後に、日本人留学生らと、彼らに関する特別授業についてお知らせがあります」
とうとう四階の右側の廊下については何の説明もないまま、次の連絡事項に移った。
もやもやしているのは自分だけではなかろうに、と、弦一郎は周囲の生徒たちの表情を伺いつつ、それでも、先生のいうことなので、とりあえずは厳守を心がけることにした。
「学生ら以外にも興味深い事項であるので、よく聞いておくように。こちらはサカキ先生から仰っていただきます」
途端、水を打ったように静かだった広間が、再び浮ついた空気に包まれた。
誰もが彼に興味津々だというのに、組み分けを早く終わらせるために彼の挨拶は省略され、それを残念に思っていた者が、山ほどいたからだ。
カードにもなり、魔法界の者ならおおかた名前を知っている有名人でありながら、謎の多い日本の魔法使いであるがゆえに実際に会うことはめったにかなわない、タロウ・サカキ。
太郎は席から立ち上がると、長い脚で実にスマートに進み出て、ダンブルドアから一人分くらい開けたところに立った。
皆が、ごくりと唾を飲み込んだり、ほう、と息を吐いたりする。
「ホグワーツの皆さん、ごきげんよう。私は榊太郎。良い夜が過ごせて何より」
なめらかに低く響く声に、何人かの女生徒が、うっとりした感じのため息をついた。
「私は日本人留学生らの入学に伴い派遣された特別講師となるが、具体的に何をするのか、ということを、今から説明しよう。──私のやるべきことは、全部で四つある」
太郎は一拍間を置いて、自分の言葉が空気に染み渡るのを待った。
「まずひとつは、日本人留学生らの監督責任者であるということ。彼らは本日それぞれの寮に組分けられ、その一員となったが、留学生という立場もある。私はその立場の責任者だ」
当人である日本人留学生らだけでなく、皆が頷いた。
「ふたつめ。彼らのうち男子生徒全員は、テニスというスポーツのプレーヤーだ。これはマグルのスポーツであり、日本で最も人気のあるスポーツ。こちらでいう、クィディッチのようなものだと思ってもらえれば結構」
興味深そうな顔をした生徒が、何人か。
そして、皆それぞれ計り知れない実力がありそうな留学生らをクィディッチに誘おうとしていたのか、少し不満気な顔をした者も、ちらほらと見受けられた。
「彼らは将来プロになる可能性もある、有望な選手ばかりだ。それを考慮して、このホグワーツにいる間も練習に励むことを、ダンブルドア校長と理事会が承認してくださった。よって、テニス部を設立し、留学生らはこれに所属するものとする」
こちらは事前に知らされていたことであるので、留学生らが頷いている。
「テニスコートは、クィディッチ場の裏手。興味のある者はぜひ見学に来ていただきたい。もちろん、プレイしてみたいという者も歓迎する。一年生はクィディッチの参加ができないと聞いているので、スポーツをしたい者はぜひお勧めする」
太郎は朗々とそう言ったが、反応はあまり芳しくない。言っているのが太郎でなければ、総勢しらけているのではないだろうか、というくらいだ。
魔法界においては、スポーツといえばクィディッチ一択、というところがあるようなので、戸惑う者のほうが多いのかもしれない。
しかし意外だったのが、その中でも数少ないテニスに興味を示した者達が、皆、どうもスポーツが苦手そうな感じの連中ばかりである、ということだ。
弦一郎はその現象を怪訝に思ったが、太郎が説明を続けているので、思考を打ち切り、彼の声に意識を戻した。
「そして、みっつめ。私の担当する、『特別補講』について」
ハーマイオニーが、すばらしいニュースを聞いた、というように目を輝かせた。
だが彼女ほどあからさまではないにしろ、これには皆興味深そうな表情を浮かべている。
そして当の留学生らも、このことについてはまるで事前情報がなかったので、聞き逃すまい、と、意識を集中させた。
「これは、基本的に、留学生らのためのものだ。彼らは二年間しかこちらに通うことが出来ないが、三年生から七年生までの間に学ぶことの中には、イギリス魔法使いとしてぜひ知っておきたい、また知っておかなければならない重要事項もいくつかある」
これには、教諭陣らが、特に深く頷いていた。
「そして、彼らは二年後に帰国した時のために、本来日本の学校で学ぶマグルの勉学も習得しなければならない。そのため、それら全てをピックアップし、二年間の間で学ぶのが、この『特別補講』だ」
よって留学生らは通常の生徒よりも授業のコマ数が多くなるが、勤勉な日本人の心根を見せてくれたまえ、と、太郎は少し挑戦的に言った。
「また、授業は休日の午前中に行う」
弦一郎を含め、全ての留学生らは当然のようにそれを受け止めたが、太郎の発言にも、そしてそれを平然と受け入れる留学生らにも、一般生徒らは、信じられないというような顔をしていた。
だが本来のホグワーツのカリキュラムは、とても緩やかなものだ。
一、二年生で学ぶ科目は、薬草学、魔法史、呪文学、変身術、闇の魔術に対する防衛術、天文学、魔法薬学、飛行訓練。飛行訓練は、二年生から除外される。
授業開始が09:00だが、授業の内容に伴い、一コマの授業時間は毎回異なる。天文学などなら、深夜の天体観測授業などもある。
それは仕方がないにしろ、とにかく授業数が少ないのだ。選択科目のない一、二年生だと、午後丸々何もない、という日もある。
日本の小学校では、月曜から金曜までぎっちり毎日六コマの授業をこなし、更にはテニスと剣道をこなす弦一郎にしてみれば、ホグワーツのカリキュラムは「ぬるい」どころか「たるんでいる」と評するにあまりあるものだ。
弦一郎は、自習のために問題集などの教材を持ってきているし、空いた時間はテニスに費やそうとは思っていたが、太郎が『特別補講』を行ってくれるというのは、とてもありがたいし、安心した。
「この『特別補講』は、留学生だけでなく、一般の生徒の参加も許可する。ただし基本的に留学生のための授業なので、完全に彼らに合わせたカリキュラムとなっていることは了承していただきたい。上の学年の授業のポイントを先んじて経験しておきたい者、もしくは過去の授業を復習しておきたい者、そしてマグルの学校の授業に興味のある者は、私の部屋の前にある、参加希望者の帳面に名前を書いておくこと」
ハーマイオニーの顔が、とんでもなく輝いている。彼女は帳面のすべての日程に名前を書くに違いない、とハリーとロンは確信した。
「そして、よっつめ。『日本の文化と魔術に関する特別講義』についてだが、こちらはその名の通り」
太郎は、重厚なベルベットのローブの裾を捌いた。舞台俳優のようである。
「組分けの前に校長が仰っておられた通り、日本には、マグルと魔法使いの区別がない。よって日本の魔術は伝統文化、無形技術などと深く結びついている場合が多く、日本の魔術を知るには、日本の文化や技術を知る必要がある。──例えば陰陽術、日本舞踊。剣術、言霊、民俗学、書道、風水など──」
どれか聞いたことのある者は? と太郎が聞くと、ハーマイオニーが、もうたまらない、というような表情で、小さく首を振っていた。全く聞いたことのない情報の山に、武者震いが止まらないのだろう。
「留学生らの中には、こういった日本特有の文化を専門に学んでいる者がいる。そうでなくとも、自分の得意分野、専攻がある者ばかりだ」
皆が、一斉に、自寮に組み分けられた留学生らを見た。
安倍晴明からのルーツを持ち、陰陽道の有名な家系であるという、藤宮紫乃。
かの『蛇女帝』の孫にして、神楽なども含む日本舞踊の舞手である上杉紅梅。
古くからの剣術道場の子息である、真田弦一郎。
既に広すぎるほどの知識を持つことが認められ始めている、柳蓮二。
蓮二とはまた違う方向、魔法界では殆ど知られていないマグル技術の結晶である近代科学などを中心に造詣の深い、乾貞治。
そして魔法界でも独自のお家芸を持つ名家として知られる面々、跡部景吾、不二周助、白石蔵ノ介、幸村精市。
また本人にあまり自覚はないが、魔法族にはない、マグルの世界の様々な占術や風水学、占星術、果てはジンクスや都市伝説までも組み込み混ざった、猥雑かつ混沌とした現代呪術の知識を網羅し、独自の感覚で持ってしてほぼ完璧に理解している千石清純。
「よって、月に一度。彼らにひとりずつ壇上に上がってもらい、スピーチ、実演などによる、彼らの技術、技能を紹介する講演を行う」
おお〜!! と、大きな歓声が上がった。
そしていきなり、月に一度とはいえ、教わる側でなく教える側に回れと言われた留学生の面々は、各々驚き、そして各々違う反応を見せていた。
「あらぁ」と言いつつ、全く動じていない紅梅。
「む」と唸りながらも、刀を持ってきていて正解だった、と頷く弦一郎。
「ふふ、面白そうだね」と美しい微笑みを浮かべる精市。
「テーマを絞るのが骨だな」と余裕の蓮二。
「実演はどの程度許してもらえるのかな」と眼鏡を光らせる貞治。
「よっしゃ! 語りまくってええねんな!?」とうきうきしている蔵ノ介。
「黒魔術を皆の前でやるのは少し難しいなあ」と少し困っている周助。
「自由研究発表みたいなもん? 得意だよ! まーかせて!」と明るい清純。
「おもしれーじゃねーの」とにやりと笑う景吾と、そんな彼に「アトベ様の講演!」と歓声を上げるスリザリンの面々。
そして、重度の人見知りでシャイな性格の紫乃は、舞台に立って一人で長時間何か喋らなければならない、ということに、もはや真っ青になっている。
だが本当に、最も困り果てているのは、実は、手塚国光であった。
なぜなら彼はマグル生まれで、特別な家業があるわけでもない。強いて言えば山登りと釣りが趣味だが、それを壇上で語るというのはふさわしくないだろう。
それに、実は、国光は決められた課題をコツコツこなすのは苦でも何でもないが、いわゆる『自由研究』の類のものが、本当に苦手なのだ。
「そのため、授業というよりは、文化交流会といってもいいだろう。また、今月末に第一回を行うが、これは日本の文化の基礎知識を持ってもらうため、私が担当する」
興奮する生徒らを収めるように、舞台俳優のような、見事な太郎の声が響く。
「毎回、全校生徒参加して貰うので、場所はここ、大広間を使わせて頂く」
「ぜんこうせいと……!」
引きつった声を上げた紫乃は、もはや卒倒しかけている。
ふらりと傾いた彼女を、精市や蔵之介、ハーマイオニーたちが慌てて支えた。
「長くなったが、説明はここまで。同じ内容を、私の部屋の前の掲示板に張り出してあるので、確認はそれを見るように。また留学生らは、明日の早朝07:00に、全員、テニスコート集合。全員の顔合わせと、今言った特別講義に関する事項を含む連絡を伝える」
はい! と、四つの寮から、留学生らの、それぞれ威勢のいい返事が発される。
無論、ハッフルパフからの声が一番大きかった。
「よろしい。では行ってよし!」
太郎がビシリと杖を振ると、ボン! と空中で爆発が起こり、きらきらとした妖精の粉のようなものが、生徒たちに降り注いだ。
まるで星が降ってきたようなそれは、しかし実体がなく、身体に触れた途端にすうっと消える。
その幻想的な光景に、割れるような大歓声が、大広間じゅうに響き渡った。